2009 年 5 巻 p. 315-334
過去四半世紀にわたる地方財政計画の変遷について,主要な歳出項目別の時系列分析を行い,近年の計画の抑制的見直しについて評価を加える。この分析過程では,各項目の算定根拠として積み上げられた施策・事業の変化に着目する。分析の結果,1990年代前半までの地方財政計画の膨張は単独事業分,なかでも長期計画事業や新規事業の増額計上が顕著である。1990年代後半以降の抑制・減少は単独事業分の圧縮によるが,新規事業の整理縮小のみならず過疎対策事業といった毎年計上事業分の圧縮,給与関係経費といった経常経費の減額にまで及んでいる。単独事業分のなかでもナショナル・ミニマムに関わるものの財源保障の削減は懸念され,マクロの財源保障に幅を持たせておくことは地域的に顕在化する行政需要に応える意味でも重要である。