2009 年 5 巻 p. 354-371
本稿は,日本では殆ど研究されたことのない文化税制に関して,その範囲を定め,理論的根拠とそのインパクトについて検討したものである。1980年代以降,文化税制が顕著な発展傾向を見せていることは,2008年1月の海外調査によっても明らかである。かかる調査を踏まえ,環境税における政策課税の議論や,アメリカ,オランダ等の理論研究を踏まえ,政策課税としての文化税制の理論的根拠とインパクトに関して検討する。それは,公共政策における公私分担の変化や,租税支出による社会保障支出の増加という流れの中で,文化政策における租税支出や目的税の,今日的意義を明らかにしようとする試みでもある。