財政研究
Online ISSN : 2436-3421
研究論文
フランスにおける単一総合累進所得税制の形成
―1959年税制改革の考察
小西 杏奈
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2010 年 6 巻 p. 208-231

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抄録

 フランスでは,第2次世界大戦後も総合累進所得税と分類所得税から成る二重の所得税制が継続し,1959年の税制改革でようやく二重の所得税制が統一され,単一の総合累進所得税制が導入されることとなった。本稿では,この所得税制改革の分析を通じて,フランスで単一の総合累進所得税制が導入される過程と本改革の特質を明らかにする。1959年改革時に,内外の経済政治状況の変化に直面していたフランスでは,労働所得への軽課という伝統的な租税原則の根拠が希薄化し,この原則を担保していた分類所得税制の見直しが要求された。そして,財政担当大臣のイニシアティブにより,分類所得税制は廃止され,単一総合累進所得税制の創設が決定されたのだが,従来の租税原則が当時の政権のディスインフレ政策と結びついて影響力を持ったため,改革のインパクトは限定され,労働所得への軽課という特質は残存した。

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© 2010 日本財政学会
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