財政研究
Online ISSN : 2436-3421
研究論文
公的支出の地域経済への効果
近藤 春生
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2011 年 7 巻 p. 123-139

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抄録

 本稿の目的は,わが国における国ないしは地方政府の公的支出が地域経済(生産量,雇用,民間需要)にどのような影響を与えているかを,地域レベルのデータを用いた実証分析により明らかにしようとするものである。財政政策の効果について,ベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いて分析した結果,以下の3点が明らかにされた。①公共投資が生産量や雇用を高める効果は認められるものの,政府消費の効果は低いこと,②1990年代以降,公的支出の民間需要,生産量に与える効果は大幅に低下していること,③公的支出の経済効果を地域別に見ると,都市圏において高く,非都市圏において低いことである。この結果から判断する限り,公共投資政策をはじめとする,公的支出が地域経済に及ぼす効果は限定的であり,地域経済の活性化を意図して,裁量的な財政政策を行うことには限界があるといえる。

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© 2011 日本財政学会
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