財政研究
Online ISSN : 2436-3421
研究論文
ドイツにおけるエコロジー税制改革の発展と限界
佐藤 一光
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2012 年 8 巻 p. 155-175

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抄録

 本稿はドイツの「エコロジー税制改革の更なる発展に関する法律」の特徴を明らかにし,その成立過程を分析することで環境税と二重の配当を租税論的に再検討するものである。第2次シュレーダー政権のもと成立した同法の特徴は,①環境政策上有害な租税支出を縮小し,②エネルギー源別の税率を調整し,③租税負担のキャップにエネルギー利用削減のインセンティブを付与するという,エコ税のグリーン化ともいうべきものであった。その一方で,④二重の配当による失業の減少を目指さずに財政健全化の財源として位置づけられた。このことは,第1次シュレーダー政権の雇用政策と租税政策が景気後退期において失敗し,失業と財政赤字が拡大するという文脈の中で理解されうる。租税論的知見として,①費用効率性ではなく原因者原則と充分性による環境税の理解,②雇用政策に租税政策を活用することの困難性が示唆された。

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© 2012 日本財政学会
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