抄録
批判哲学の本来の意味において、即ち「人間理性の可能と限界とを確定する」という意味においては、直観的悟性乃至知的直観はこの限界の外に在るものとして単に消極的な意味において、即ち全く不可知的なもの、問題的なものとして想定せられるに過ぎぬと考えられるのが普通である。然しカント自身言う如く、理性の限界を問題にすることは既にその外への展望を有して初めて可能であるとするならば、人間理性を有限として考えること自体が直ちに無限なるものを予想していると言わねばならぬ。有限性は無限性と相即しなくてはならぬ。批判哲学が有限の立場であるということは反面において直ちに無限に連ることを意味するであろう。この意味で直観的悟性乃至知的直観は、批判哲学の「不可避的」な予想であり、否根抵であると言わねばならぬ。私は直観的悟性のかくの如き意義を批判哲学の体系的解釈と関連して明らかにしたいと思う。