静脈学
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総説
脳静脈灌流障害の病態に関する基礎的研究
中瀬 裕之開道 貴信Tomas SvobodaCarlo Schaller大塚 裕之永田 清榊 寿右Oliver Kempski
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2001 年 12 巻 4 号 p. 297-302

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抄録

われわれが行ってきた脳静脈灌流障害の病態に関する基礎的知見を報告する.雄Wistarラットを用いて,全身麻酔下に光感受性色素を用いた脳皮質静脈閉塞モデルを作成した.laser Doppler“ scanning法”と蛍光血管撮影を行い,閉塞後経時的に静脈閉塞部を中心に25(5×5)カ所の局所脳血流(ICBF)を測定した.同時に光学顕微鏡用画像処理解析装置を用いて静脈血流と血栓の広がりを観察し,脳障害との関係を検討した.実験1:脳静脈灌流障害下での脳圧迫の影響,実験2:脳静脈灌流障害における年齢の影響,実験3:脳静脈還流障害下における脳血流自動調節能を検討した.結果としては,(実験1)脳静脈灌流障害下では軽度の脳圧迫で脳は虚血に陥り脳障害を起こした.(実験2)高齢群では,若年群と比較し,静脈閉塞後急激な虚血に陥り重篤な静脈梗塞がみられた.(実験3)脳静脈還流障害下では,正常と比較し脳自動調節能の範囲は狭くなっていた.

以上のことより,静脈血栓の進展とその後に起こる虚血が,脳静脈還流障害から静脈梗塞に陥る原因と考えられた.また,軽度の負荷が加わることにより容易に梗塞に陥る危険があることが証明された.これらの結果は,脳静脈還流障害の病態の解明や治療法の確立の際の基礎的裏付けとなると考えられた.

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