骨盤静脈疾患(pelvic venous disorders: PeVD)の重要性がますます認識されるようになっているが,有効で信頼できる分類手法の欠如により,この分野の進歩は制限されてきた.メイ・ターナー症候群(May-Thurner syndrome),骨盤うっ滞症候群,ナットクラッカー症候群(nutcracker syndrome)などの病態生理を理解しづらい従来の命名法は,多くの骨盤症状とその根底にある病態生理との相互関係の認識を妨げることがしばしばある.米国静脈リンパ学会は,PeVDの識別分類手法の開発が必要であると考え,そのための国際的な学術委員会を招集した.今回,開発したPeVDのSymptoms-Varices-Pathophysiology(SVP)分類手法には,症状(S),静脈瘤(V),および病態生理(P)の3つの領域が含まれており,さらに病態生理(P)領域には個々の患者における解剖学的部位(A),血行動態(H),および病因(E)が含まれる.すなわち個々の患者はSVPA,H,Eとして表現されることになる.骨盤に起因する下肢症状がある患者の場合,SVP分類はClinical-Etiologic-Anatomic-Physiologic(CEAP)分類を補完するものとなるため,CEAP分類と併用する必要がある.SVP分類は,PeVDにおける多様な患者集団を正確に定義することができ,これは診療方針決定を推進し,疾患固有の転帰の評価方法を開発し,臨床試験のために同じ分類に属する患者集団を識別する上で重要なステップである.(J Vasc Surg Venous Lymphat Disord 2021; 9: 568–584.)
抄録全体を表示