静脈学
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原著
  • 渡部 真吾, 増田 怜, 薄井 宙男
    2024 年 35 巻 3 号 p. 361-364
    発行日: 2024/10/10
    公開日: 2024/10/10
    ジャーナル オープンアクセス

    タバコ窩arteriovenous fistulaは,穿刺可能部位が広く得られること,steal現象が起きにくいことからバスキュラーアクセスの初回作成部位として有用である.タバコ窩arteriovenous fistulaに対するバスキュラーアクセスインターベンションの開存率に関する報告は少なく,今回われわれは調査を行った.当院でarteriovenous fistulaに対して初回バスキュラーアクセスインターベンションを行った151症例をタバコ窩arteriovenous fistula群(タバコ窩AVF群 N=25)と非タバコ窩arteriovenous fistula群(非タバコ窩AVF群 N=126)の二群に分け一年間の開存率について調査した.一年間の開存率はタバコ窩群64.0%,非タバコ窩群59.5%と有意差はなかった(P=0.68).タバコ窩arteriovenous fistulaに対してのバスキュラーアクセスインターベンションの開存率は他の部位と比べ有意差は認めなかった.

  • 戸島 雅宏, 井上 幸子, 江平 寿也
    2024 年 35 巻 3 号 p. 365-371
    発行日: 2024/10/10
    公開日: 2024/10/10
    ジャーナル オープンアクセス

    伏在型下肢静脈瘤治療時,下腿部大伏在静脈(BK-GSV)併用処置の効用は議論中である.伏在型下肢静脈瘤1,791下肢に対し,初回治療時に高位結紮術(2カ所)と伏在静脈本幹および下腿静脈瘤の硬化療法を併用し,術後3カ月時点でBK-GSV閉塞群(1,632下肢),開存し逆流なし群(62下肢),開存し逆流あり群(97下肢)の3群で,BK-GSV累積逆流出現率,BK-GSV逆流による累積再発率を比較検討した.BK-GSV 10年累積逆流出現率は閉塞群37.1%,開存し逆流なし群72.6%であった.BK-GSVに起因する10年累積再発率は閉塞群7.2%に対し,開存し逆流なし群42.3%,開存し逆流あり群45.3%であった.いずれも閉塞群で有意に低かった.本法はBK-GSV逆流出現率およびBK-GSV逆流による再発率を減少させ,伏在型下肢静脈瘤治療の長期成績改善に有用と考えられた.

  • 田淵 篤, 柚木 靖弘, 渡部 芳子, 桒田 憲明, 田村 太志, 古澤 航平, 山根 尚貴, 山澤 隆彦, 金岡 祐司
    2024 年 35 巻 3 号 p. 373-378
    発行日: 2024/10/10
    公開日: 2024/10/10
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年版CEAP分類で新たに記載された冠状静脈拡張(C4c)および再発性静脈瘤(C2r)の臨床的特徴を検討した.2020年1月から2022年10月に下肢静脈瘤血管内焼灼術およびシアノアクリレート系接着材による血管内治療を行った232肢のうち,C4cは23肢(10.0%),C2rは30肢(13.0%)であった.C4c症例はC4a–C6の合併頻度がC4cでない症例と比較して有意に高頻度であった.術後12カ月で自覚症状,皮膚病変が増悪した症例はない.C2rの原因はtactical error 7肢,technical error 4肢,neovascularization 5肢,disease progression 14肢であった.rVCSSは術前5.4±2.2,術後12カ月1.2±1.4で有意に改善した.C4c, C2rは正確な病態,原因の診断と適切な治療を行えば自覚・他覚症状は改善し,病状進行が回避できると考えられた.

  • 草川 均
    2024 年 35 巻 3 号 p. 403-408
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    伏在静脈血管内焼灼術の早期成績が優れているという報告は多くみられるが,長期成績はほとんど示されていない.そこで当施設のラジオ波焼灼術(RFA)の5年後の臨床成績を調査した.2017年にRFAを施行した連続275例,350肢,354本(GSV: 290本,SSV 64本)に対し,通常の術後6カ月までの経過観察外来での所見に加え,その後の来院所見,5年後の電話調査にて5年後までの再手術の有無について問診したところ,再手術率は10.7%(GSV; 大伏在静脈: 9.7%,SSV; 小伏在静脈: 15.6%)であった.再手術の原因の逆流箇所は,GSV治療後では不全穿通枝(IPV),深部静脈接合部関連と遺残下腿GSVが,SSV治療後ではIPVと単独側枝瘤が多かった.全症例のうち171例,221肢,225本(64%,GSV: 182,SSV: 43)には5年後の下肢静脈エコーを行った.治療した伏在静脈の閉塞率はGSVでは98.9%,SSVでは95.3%であった.当院の6カ月までの経過観察で術後再発の大部分が把握可能で,神経障害は6.2%にみられ,4割強で完全に回復することが判明,GSV焼灼後5年では約8割で副伏在静脈は遺残していた.

症例報告
  • 大澤 宏, 滝澤 恒基
    2024 年 35 巻 3 号 p. 355-360
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス

    Klippel-Trenaunay症候群(KTS)は先天性のポートワイン母斑,静脈瘤を主とした血管奇形,および患肢の過伸長の3徴を認める症候群であり,坐骨静脈の遺残や特徴的な拡張したlateral marginal vein(LMV)を認めることがある.今回,逆流を伴う拡張したLMVに対して血管内焼灼術を施行したので報告する.症例は23歳女性.左下肢の浮腫と静脈瘤を主訴に来院.左下肢に広範なポートワイン母斑を認めた.下肢長に左右差は認めなかったがKTSと考えられた.左臀部外側から下肢外側に表在性の拡張した逆流静脈(LMV)を認め,深部静脈には異常を認めなかったため,レーザーで血管内焼灼した.術後浮腫は改善した.KTSの逆流を伴うLMVなど表在静脈に対する治療には手術適応があれば血管内焼灼術が有用である.

手術・手技の工夫
  • 箕輪 和陽, 根本 寛子, 孟 真, 藤井 悠, 増田 拓, 阿賀 健一郎, 伏見 謙一, 輕部 義久, 橋山 直樹, 齋藤 綾
    2024 年 35 巻 3 号 p. 397-401
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    伏在型下肢静脈瘤の約半数の症例は,静脈逆流が本幹の途中で消失し,逆流の遠位端から静脈瘤が出ることが多い.下肢静脈瘤血管内焼灼術の際に静脈瘤分枝部の遠位の伏在静脈は径が細い,あるいは退縮・消失しているので,穿刺が困難であることがある.通常はそのような症例には,静脈瘤分枝部より近位側の径が太い伏在静脈を穿刺する.しかし,この場合は皮膚熱傷を避けるために治療が必要な伏在静脈が残存する.そこで,われわれは静脈瘤分枝部まで伏在静脈を焼灼する目的で皮膚穿刺部位を遠位側に設定して,焼灼カテーテルが皮下組織内を通過してから,伏在静脈–静脈瘤分枝部に挿入する「皮下穿刺法:trans-subcutaneous tissue puncture for ETA (TSTP法)」を考案して施行している.本法は逆流する伏在静脈を可能な限り焼灼して,静脈瘤に対する追加治療を回避もしくは減少することに貢献できると考える.

地方会抄録
ガイドライン
  • 久米 博子, 大井 理恵, 小畑 貴司, 佐藤 礼佳, 滝澤 恒基, 谷口 哲, 戸島 雅宏, 永瀬 隆, 渡部 芳子
    2024 年 35 巻 3 号 p. 379-395
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    骨盤静脈疾患(pelvic venous disorders: PeVD)の重要性がますます認識されるようになっているが,有効で信頼できる分類手法の欠如により,この分野の進歩は制限されてきた.メイ・ターナー症候群(May-Thurner syndrome),骨盤うっ滞症候群,ナットクラッカー症候群(nutcracker syndrome)などの病態生理を理解しづらい従来の命名法は,多くの骨盤症状とその根底にある病態生理との相互関係の認識を妨げることがしばしばある.米国静脈リンパ学会は,PeVDの識別分類手法の開発が必要であると考え,そのための国際的な学術委員会を招集した.今回,開発したPeVDのSymptoms-Varices-Pathophysiology(SVP)分類手法には,症状(S),静脈瘤(V),および病態生理(P)の3つの領域が含まれており,さらに病態生理(P)領域には個々の患者における解剖学的部位(A),血行動態(H),および病因(E)が含まれる.すなわち個々の患者はSVPA,H,Eとして表現されることになる.骨盤に起因する下肢症状がある患者の場合,SVP分類はClinical-Etiologic-Anatomic-Physiologic(CEAP)分類を補完するものとなるため,CEAP分類と併用する必要がある.SVP分類は,PeVDにおける多様な患者集団を正確に定義することができ,これは診療方針決定を推進し,疾患固有の転帰の評価方法を開発し,臨床試験のために同じ分類に属する患者集団を識別する上で重要なステップである.(J Vasc Surg Venous Lymphat Disord 2021; 9: 568–584.)

その他
  • 津田 絵里香, 三宅 ヨシカズ, 藤本 穂波
    2024 年 35 巻 3 号 p. 409-413
    発行日: 2024/12/04
    公開日: 2024/12/04
    ジャーナル オープンアクセス

    リンパ浮腫に対する圧迫療法では,適切な弾性着衣を継続することが重要である.しかし,受診する患者の弾性着衣の装着状況を確認すると,圧迫療法から脱落している患者が多いと感じた.当院での弾性着衣の継続率と脱落者ゼロをめざした圧迫療法を継続するための工夫について報告する.2021年9月から2022年9月までに,当院で弾性着衣の初回選定をした患者94名を対象とした.初回選定から6カ月以上経過した時点での圧迫療法継続率は98.6%であった.継続率を高く維持するために,無料での相談,リーフレットの作成,弾性着衣のレンタル試着制度,受診のたびに評価・介入するなどの工夫をしている.初回導入時から時間をかけ,手間をかけ,患者に介入し,ときには褒め,励まし,結果としてリンパ浮腫の症状が改善していくことが脱落者をゼロに近づける秘訣であると考える.

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