経静脈的な抗凝固薬として未分画へパリンが,経口抗凝固薬としてワーファリンが長らく使用されてきた.いずれも投与量の調節により強力な抗血栓効果を期待できる一方,投与量と効果の関係が個人により,個人のおかれた環境に影響を受けるため薬効モニタリングが必須であるとの欠点を有した.未分画へパリンのうち,低分子成分を抽出することにより吸収,体内での代謝の均一化を計ることが可能である.こうして作られた低分子ヘパリンでは薬効モニタリングが不要となった.経口薬では長らく安全性の改善が遅れていた.経口吸収可能な抗トロンビン薬であるximelagatranは,内服後の薬効の出現,消失プロファイルが低分子ヘパリンと類似した.食物,併用薬などによる影響を受けない経口抗凝固薬となれば,煩雑なモニタリングをせずに安全な抗凝固療法が可能となると期待される.生体内の血栓形成メカニズムの理解に基づいたより安全で効率的な抗凝固薬の開発が期待されている.