2006 年 17 巻 5 号 p. 287-291
症例は63歳,女性.約13年間に及ぶ慢性静脈鬱滞症,下肢静脈瘤に対し加療を受けるも軽快せす,さらに最近4年間で両側の難治性下腿潰瘍がさらに悪化したため受診となった.来院時両下腿の著明な腫脹,感染を伴った潰瘍形成,色素沈着,皮膚硬化を認めた.直ちに局所の薬浴,デブリードマン,強力な圧迫療法を開始,同時に順行性および逆行性静脈造影検査,エコー検査などの評価を行った.深部静脈はKistner分類Ⅲ度の逆流を認めた.潰瘍形成部分の不全交通枝評価が難しく初回手術として大伏在静脈高位結紮術および,膝直下部分までの不全交通枝結紮術,静脈瘤切除術を行った.二期的に潰瘍部分に存在する不全交通枝の評価後,結紮処理を行い軽快せしめることができた.われわれは深部静脈の弁不全が関与していても,鬱滞の原因と潰瘍に関与する不全交通枝が完全に処理できれば治癒可能という方針の下に治療を行ってきたので,若干の文献的考察を加えて報告する.