下大静脈フィルターは深部静脈血栓症からの遊離血栓捕捉を目的として,急性肺血栓塞栓症治療に日本では積極的に用いられてきている.急性近位部深部静脈血栓では下大静脈フィルターは肺塞栓症を減少させたが,反復性深部静脈血栓を増加させ,死亡率には影響しない.しかし,急性肺血栓塞栓症を対象とした場合,死亡率や診断後の急変を減少させた.フィルター関連合併症を増加させないため,非永久留置型フィルターを1週間以内に留めるべきであるという報告がある.抗凝固療法の慢性期での併用に関しては,血栓塞栓症を減少させるというエビデンスはない.エビデンス・レベルの高い下大静脈フィルターの臨床研究は少なく,未だ下大静脈フィルターの利点,欠点が充分には明らかではなく,今後のいっそうの研究が望まれる.