2009 年 20 巻 1 号 p. 1-6
漢方薬の桂枝茯苓丸は鬱血した状態の治療薬のひとつで,深部静脈血栓症に対して有効との症例報告はあるが,明確な比較対象試験の報告はない.そこで深部静脈血栓症に対する効果を検討した.発症後1週間以内でヘパリンとウロキナーゼの点滴静注により治療した.下肢深部静脈血栓症の患者12例を対象とした.桂枝茯苓丸の内服を6カ月間させたA群(n=6)と内服させなかったB群(n=6)とに分け,治療前後の健肢と患肢の下腿周径差の変化で評価した.治療前後の周径差はA群では5.6±1.3cmから1.8±1.1cmに,B群では5.2±2.3cmから3.5±1.9cmに減少し両群とも有意に改善した(p<0.05).しかし,下腿周径差の改善率=(治療前の周径差-治療後の周径差)/治療前の周径差x100%について検討すると,A群では66.1±20.5%,B詳では34.0±13.7%でA群の方がB群よりも改善率が有意に高かった(p<0.05).桂枝茯苓丸の内服は簡便であり深部静脈血栓症の下腿腫脹の改善に有効な治療薬と考えられる.