2020 年 83 巻 1 号 p. 50-55
トリアセチルセルロース(TAC)をベースとする,写真用フィルムの劣化状態を診断するシステムについて記述した.この診断システムは人間ドックの考え方を参考としており,TACベースフィルムから発生する酢酸ガス量だけではなく,TACベースフィルムの構造や,物性に関する知見が得られる.複数の分析機器を用いた結果から,定量的かつ総合的に,TACベースフィルムの劣化診断が可能であった.また,目視や嗅覚による検査では劣化の兆候が観測されなかったTACベースフィルムについても,本診断システムを適用することによって,TACベースの劣化状態を識別可能であることが示された.