日本写真学会誌
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最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 高田 俊二
    2024 年 87 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    間もなく創立 100 周年を迎える日本写真学会は,1926 年に写真製品の国産化を目指して,「写真を科学する写真学会」と して創設された.その後十数社に及ぶ感光材料の製造会社が設立されたが,1943 年戦時の企業整備令により,小西六写 真工業・オリエンタル写真工業・富士写真フイルム・三菱製紙が生き残り,戦後の 4 社体制が確立した.本報では,一般 写真分野,動画映像分野,画像診断分野,印刷製版分野の写真フィルム産業を対象に,国産化のために欧米の先進技術を キャッチアップした 1940 ~ 1970 年を第一時代とし,そしてグローバル市場を目指して,独自技術を搭載した製品群で世 界進出した 1970 ~ 2000 年を第二時代とした.第二時代は同時に,各分野においてフィルム産業の破壊型技術を開発した 時代でもあり,これらの破壊型技術が 2000 年以降の第三時代のデジタル化の市場変革に対して力強い推進力となった.
  • 高橋 俊之
    2024 年 87 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    写真乾板の日本での国産化に成功した「東洋乾板株式会社」は,写真化学の研究に心血を注いた高橋慎二郎が,資産家の 菊池恵次郎の支援を得て,大正 8 年に東京の雑司ヶ谷に設立した.その後,大日本セルロイド株式会社の出資を得て,昭 和 9 年に富士写真フイルム株式会社の設立に伴い統合され,同社の源流となった.
  • 荒河 純
    2024 年 87 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    富士写真フイルム(現・富士フイルム)は大日本セルロイド(現・ダイセル)の一部門から,1934 年に独立した会社です. 大日本セルロイドは,1919 年に森田茂吉がセルロイド会社 8 社を統合して創立したものです.当時雨後の筍の如く乱立 したセルロイド会社の過当競争と第一次世界大戦後不況を乗り切るための要請に応えたものでした. 森田はセルロイドの新しい用途を求めて,写真フィルム事業への参入を計画します.そして,大日本セルロイド社内に「フィ ルム試験所」を設立し,フィルムベースの研究を始めました. 一方,写真乳剤については,1919 年に設立された東洋乾板に対して出資,研究者も送り込んで研究を加速させました. 昭和に入ると映画が国民的な娯楽として盛んになり,1933 年には映画用フィルムの国産化が国の助成事業として採択さ れます.これを契機として,大日本セルロイドは新会社の設立を決断し,翌年,富士写真フイルムが誕生しました. 会社の創立当初は,品質の未熟さとコダック,アグファの妨害にあって,大変な苦難を強いられましたが,春木栄らの奮 闘によってこれらを克服して,約 2 年後には映画配給会社各社で採用されるに至りました.
  • 水谷 恒夫
    2024 年 87 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    オリエンタル写真工業株式会社の創立者である菊池東陽は,ニューヨークで写真館を開業し,ホームポートレート撮影を 営んでいた時期に,偶然出会った著名人たちの協力を得て,日本で感光材料工業を興したいという思いを強く抱いた.東 陽は独学で化学を基礎から学び乳剤を完成させ,のちに帰国後,創立に関わった勝精伯爵と会社創立に奔走した.勝精伯 爵の人脈を通じて財界著名人達も設立に後押しをし,1919 年,オリエンタル写真工業が創立された.取締役会長に財界 の有力者植村澄三郎が就任したが,当時は舶来品への賞賛の時代において,営業は人一倍苦難が伴った.ここに突然関東 大震災の発生により輸入品が不足して価格が高騰した.その結果,国内に唯一在庫を抱えていた当社の印画紙の需要が急 増して,会社が成長期に入った.戦後になって国産初のネガポジ式カラー写真システムなどカラー写真時代に先駆けた製 品を市場に投入したが,国内外の市場激化により業績は低迷し事業が行き詰まった.1995 年会社更生法適用を申請して 事実上,会社の歴史に幕を閉じた.本報では主に菊池東陽の戦前における創業と業績拡大の歩みから,戦後に技術力を発 揮した一時期までを,当社 70 年史を引用して述べてみた.
  • 金田 英治
    2024 年 87 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    三菱製紙は紙パルプ産業の会社である.何故畑違いの感材を製造する会社になったのかを当社の「百年史」を中心として, さらに筆者の調査をも加えて記した.結論は,当社が古くから(1915 年)バライタ紙の研究を始めており,1935 年から 高砂工場から六桜社に出荷開始していたことが,1943 年の京都写真工業との合併に繋がり,さらに三菱製紙京都工場の 発足に繋がったのである.当社の京都工場の産業史を中心に・高砂・中川・北上工場における感材の生産の歴史を記した.
  • 加藤 隆志
    2024 年 87 巻 2 号 p. 102-
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
  • 谷 忠昭
    2024 年 87 巻 2 号 p. 103-115
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    光触媒粒子による水の全光分解(OWS)の STH 変換効率(1.1%)は実用化水準(5-10%)にはまだ遠いので,新しい観 点からの分析と施策の探求も望まれる.本解説では,光触媒の誕生をもたらし共通点が多い銀塩写真のハロゲン化銀 (AgX)粒子と対比して光触媒粒子の物性と挙動を分析した.その結果,光触媒粒子と AgX 粒子が高いイオン活性とい う共通点を有することから,欠陥に捕獲された電子や正孔の再結合がイオン緩和によって抑制されることが AgX 粒子の みならず光触媒粒子においても起こっていることを指摘し,検証した.吸収端波長が長い光触媒粒子の OWS の効率を向上させる指針は欠陥の除去による再結合の抑制ではなく,バンドの位置の制御であると提案する.
  • 水口 淳
    2024 年 87 巻 2 号 p. 123-
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
  • 数藤 雅彦
    2024 年 87 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    写真資料をデジタル保存し,インターネットで公開する場合には,権利処理が必要になる場合がある.本稿では,写真資 料をデジタル化して,インターネットで公開する場面を想定して,著作権や肖像権などの主な法的問題を概観する.
  • 入江 満
    2024 年 87 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    光ディスクは保存時にエネルギーを要しないため脱炭素化社会に適し,データの廃棄は光ディスクを粉砕することで情報 漏洩を防止できるためディジタルデータのアーカイブ保存媒体として再認識がなされている.その活用を推進することを 目的として JIS X 6257 を改正して JIS X 6257:2022“長期データ保存用光ディスクの品質判別方法及び長期保存システムの 運用方法” を制定した.ここでは,光ディスクアーカイブシステム運用の標準規格の概略と当該 JIS をもとに策定した国 際標準規格 ISO/IEC 18630 の動向について報告する.
  • 矢島 仁, 山田 勝実, 本間 麟
    2024 年 87 巻 2 号 p. 136-141
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    株式会社小西六(現在のコニカミノルタ株式会社)が 1940 年(昭和 15 年)に発表した重層式カラープリント方式「六櫻 社式天然色印画法」のためのトライパック方式三色分解撮影フィルム「さくら三色用フヰルム」の開発から製品撤退後ま での技術的変遷を追跡する試みである.このフィルムの発売は 1941 年 6 月であるが,翌年の 1942 年 6 月には改良タイプ が発売になっている.また販売終了は 1944 年ごろと推定されるが,多くの資料が失われており詳細は不明である.しか しながら,東京工芸大学に保存されている開発者,江頭春樹の研究資料「江頭先生標本二千点」を調べることにより,初 期のものと改良された製品の仕様の違いと,それぞれの画像品質が明らかになった.
  • 吉田 律人
    2024 年 87 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    災害の状況を記録した写真は過去の事象を検証する重要な手がかりとなるが,踏み込んだ分析はほとんどなされていない. 本稿では,関東大震災時の横浜を記録したガラス乾板写真を事例に,分析方法の実践例を提示した.
  • 伊藤 泰雄
    2024 年 87 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 2024/05/20
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル オープンアクセス
    古写真に写っている人物の名前は,後世の人が誤って推測したり,都合がいい人物を当て嵌めたりした結果,間違ってい ることが少なくない.そこで長年,写っている人物について議論が多い「フルベッキ写真」中の人物を特定するにあたっ て,客観的な判定手段として AI を用いた顔認証技術を応用した. 顔認証には Amazon Web Services の Amazon Rekognition Rを用い,目視で写っている可能性が高いとされている岩倉具 定,具経兄弟や佐賀藩出身の人たちの写真を対照として,「フルベッキ写真」中に該当する人物がいるかどうかを検討した. その結果,「フルベッキ写真」中に岩倉兄弟の他,佐賀藩出身者 10 名を Amazon Rekognition Rで特定することができた. 一方,俗説として巷に流布している西郷隆盛,坂本龍馬ら幕末の志士達はいずれも「同一人物ではない」と判定された. 古写真の研究には,主観に捉われずに写真を客観的に評価する顔認証技術が有用である.
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