本報は「写真技術史のパイオニアたち」と題するシリーズの第一報である.1839 年,フランスでは「Daguerreotype」教 本が出版され,イギリスでは Talbot の「Photogenic Drawing」が王立学会で発表された.秘術であった写真術を公開させ, 科学技術に転換させた功労者は,フランスの物理学者で下院議員でもあった Arago だった.当時技術的に未完成で経済 的な価値を産めない写真研究に対して,技術公開を前提に国が年金支給する法案を成立させた.技術が公開された結果,「死 の谷」を乗越えられる技術の発展が起り,肖像写真館という新しい産業が創成された.