日本写真学会誌
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銀のリサイクルと江戸時代の写真術の再現
前野 清太朗西澤 尚平小林 秀成
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2005 年 68 巻 2 号 p. 133-142

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抄録

石川県下の高校で最大量であった化学実験廃液を再処理し, 処理料金を節約することを考えて1999年から研究を開始, 2000年には銀廃液から金属銀を回収し硝酸銀を再生することに成功した. この方法を石川県下の化学研究発表会で発表し, 他校における実践を勧誘した. 2002年に金沢二水高校化学部から譲渡された, 主として塩化銀からなる銀固形廃棄物, 約2.6kgを濃アンモニア水に溶解し, 銅片を投入することで金属銀を回収した. 回収銀は, 銀固形廃棄物1.7kgに対して273gであった. この銀をさらに濃硝酸に溶解し, 30gの銀から硝酸銀33gを得て, 再生に要する試薬の価格よりも生成した硝酸銀の価格が上回ることを証明し, 資源回収が経済的に成り立つことを示した.
この硝酸銀を使用して, コロジオン湿版写真法の再現を試みた. 金沢大学名誉教授の板垣英治氏から紹介された「写真鏡図説 (慶応3年, 柳河春三著)」を現代語訳し, コロジオン湿版の作成と現像を行った. 撮影に使用したカメラもこの図説を元にして設計・製作したもので,“世界に一つしかない” カメラとなった. この自作カメラと感材を使用して30回以上試写し, 写真を得ることができた.
この一連の研究により, 写真術のような一見複雑そうなものも, 原理を学び理解すれば, 身近なものを用いて自作できることが体験でき, 研究の成果をしっかりとまとめておけば, 時代を超えて, その研究を蘇らせることができることを学ぶことができた.

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