抄録
筆者はサロベツ湿原にある小湖沼である瞳沼(面積約7,000 m2)で長期間にわたり,沼の凍結過程や水温特性などの観察・計測を行なった。この沼には浮島がある。調査の過程でこの浮島が冬季には沈んでしまうことが分かった。そこで浮島の沈下過程を理解するために,絶対圧水位計を浮島に取り付け,その浮沈の様子を連続計測した。これと同時に,水深方向に等間隔の深度で水温を連続計測した。この一方で,これまでのシミュレーションモデルに改良を加え,夏冬の湖沼の境界条件を明確に区別することにより,冬期間の水温挙動と湖面の凍結との定量的なメカニズムを説明する新しいモデルを構築した。このモデルを用いて,湖沼の熱的変動を把握し,更に湖面の凍結過程を再現した。これに基づいて瞳沼の凍結過程と浮島が沈下するメカニズムとの関係を明らかにした。