陸水物理学会誌
Online ISSN : 2435-3043
原著論文
火山性湖沼の分水界漏出からみた水循環系:レビューと解釈
知北 和久後藤 章夫岡田 純大八木 英夫網田 和宏
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 7 巻 1 号 p. 3-13

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抄録
火山性湖沼の中で,先行研究によって水収支評価がなされているカルデラ湖と火口湖について,湖底からの地下漏水量Goutに焦点をあて,Gout値と湖の水文条件との関係についてレビューと解釈を行った。水収支期間は数日~数年と様々だが,評価されたGoutと湖水位・貯留量との関係を統一的にとらえることで,火山体がもつ水文特性を明らかにした。湖の水収支評価から,湖への正味の地下水流入量(Gin – Gout)(Gin: 地下水流入量)が求まるが,この中のGinまたはGoutを評価する方法として,1) 水面での蒸発や降水量が無視でき,Ginが基底流出のみと考えられる“完全結氷期”を収支期間に選んで求める方法,2) 別個に湖の化学物質収支を評価することで,水収支式との連立で求める方法,3) 湖の周辺流域からのGinをタンクモデルで計算し湖水位を再現することで求める方法,の3つを紹介した。これらの方法を用いて、3つの湖に適用して得られたGoutは湖の貯留量と高い相関関係 (R2 = 0.988, p<0.01) にあり,これにより地下漏出が被圧地下水流として起こることが示された。また,Goutが評価された3つの湖では水位変化に対する調節機能がそれぞれ異なることから,火山体の持つ透水性と地理的条件に関係があることがわかった。
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© 2025 陸水物理学会
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