抄録
ニコチンの呼吸作用殊にその惹起する無呼吸の機序を検討し, 次の様な結果を得た.
ニコチン靜注後に来る一過性初期無呼吸は犬, 猫では呼息性, 兎では吸息性で, 肺から発して迷走神経中を上行する反射による.
二回目の長い無呼吸は呼息性で, 従来謂われた様な先行する過呼吸の代償ではなく, ニコチンの中枢作用に基ずくものと思われる.
ニコチンの反覆投与による呼吸反応の減退は, 少くも一部は中枢乃至上行性経路の興奮性変化により, 従来の如くニコチンのクラーレ様末梢作用のみでは説明しきれない.
大量のニコチンによる呼吸停止は, 中枢麻痺によるものではなく, 筋神経接合部のブロツクによる.
上述のエコチンの諸呼吸作用--初期無呼吸一過性呼吸興奮, 第二無呼吸, 更に大量のニコチンによる筋神経接合部麻痺-これらは皆ヘキサメトニウムによつて拮抗消失される。