2022 年 28 巻 2 号 p. 161-163
肝性脳症は肝不全因子と門脈因子により生ずる中枢神経系の異常で,潜在的脳症から深昏睡まで大きな幅が認められる.肝不全因子のみで発症する肝性脳症は急性肝不全がその典型で,一方門脈因子だけで発症するものは,猪瀬型肝性脳症がその代表である.肝硬変においては肝不全因子と門脈因子の両者が肝性脳症の発症に関与している.肝性昏睡惹起物質は未だに同定されていない.我々は血液浄化の経験から昏睡惹起物質は体内分布容積の大きい水溶性の中分子物質であると考えている.アンモニアは神経毒性物質で脳症の原因物質として注目されてきたが,必ずしも血中のアンモニアレベルと脳症の重症度は一致せず,むしろアンモニアはアストロサイトの機能不全に関与しアンモニアの解毒物であるグルタミンは脳浮腫と関連すると考えている.