抄録
椎間板の構造に対する力学的挙動につき種々な検索をおこない, 椎間板及び脊椎の生理機構を力学的に究明し, 臨床的にと, 髄核摘出, 椎弓切除, 後方固定等が椎間板に如何なる影響を及ぼすかを知る目的で本実験をおこなった. 実験試料と, 人剖検例より採取した14屍体, 56腰部椎間板を用いた. それらの椎間板に椎体を介して, イソストロン型島津オートグラフにより圧縮荷重を加え, (1) その荷重量, 髄核内に刺入したトヨタ超小型細管圧力計を介し (2) 髄核内部圧力, 荷重負荷速度より (3) 椎間板変形 (縮み) 等の測定をおこなった. さらに椎弓切除, 金属副子による後方固定をおこなった試料についても同様の実実をおこなった.
実験結果をまとめると [1] 椎間板の荷重と縮みの関係と, 放物線的に挙動し, p=aλnの式で表わされる. nと個体差によってきまる定数, aは椎間板のこわさを示す.
[2] 圧縮荷重と髄核内部圧力との関係は, 一次函数に一致し直線性をしめした. 脊椎各部の荷重分担と, 髄核に55%, 線維輪に45%, 後部脊椎には分担されなかった.
[3] 脊椎プレートによる後方固定試料における髄核内部圧力の変化は, 4-7%の圧力低下をみるのみであったが, 縮みは, 30-40%の著明な減少をしめした.
[4] 椎体と椎間板の応力緩和試験より, 椎間板は粘性の小さい粘弾性体としての挙動をしめした.
以上の結果は, 垂直圧縮荷重を負荷したものであり, ヒト腰椎の多元的な運動から考え, さらに, 偏心荷重, 曲げ, ねじれ等の研究が必要と考える.