順天堂医学
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原著
SH基の反応性からみたミオシン-ATPaseの活性中心構造とその可撓性
高森 建二
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1975 年 21 巻 1 号 p. 53-65

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抄録
ミオシンATPaseの活性中心に存在する特定なSH基 (S1およびS2) の, 4種のマレイミド試薬 (NEM, MBM, BIPM, DDPM) に対する反応性を“高次構造プローブ”として用いて, S1, S2近傍の高次構造の動態を解析した. (1) S1は従来考えられていたような露出残基ではなく, むしろ埋没状態にあることが, 反応速度定数と解離定数から示された, その非常に高い反応性は, この異常に低いpKa値 (6.3) によって説明することができた. DDPMのS1に対する異常な反応性からS1近傍にヒスチヂン残基の存在が示唆された. (2) S2の反応速度は低分子モデル化合物 (NAC) に較べて極端に小さく, 基質ATP添加によりその反応性が大きく増加すること, 芳香族側鎖試薬に対する反応性が高いことから, S2も埋没状態にあると推定された. (3) S1領域はpHにより, S2領域は温度に依存してそれぞれ2つの異なった高次構造をとることが結論された. (4) S1およびS2領域は, 基質ATPまたは生成物ADPによって大きく融解されることが示された. 後者の場合には, S2が溶媒に露出するかわりに, それと等モルの特異的なSH基が代償的に分子中に埋め込まれる (S2領域高次構造のシーソー的転換現象). 以上のことからS1およびS2はATP結合部位に極めて近いところに存在し, E・ADPPi複合体では両者ともに埋没状態から露出し, 同時に他のSH基が逆に露出状態から埋没状態に移ることが結論された.
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© 1975 順天堂医学会
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