順天堂医学
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原著
Marfan症候群における大血管の嚢胞性中膜壊死の病理組織学的研究
--特に酸性ムコ多糖の組織化学的検討--
羽里 信種
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1975 年 21 巻 3 号 p. 263-275

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抄録
Marfan症候群における大血管の嚢胞性中膜壊死 (cystic medionecrosis以下CMNと略す) の病理組織学的態度-特に酸性ムコ多糖 (aMPS) の組織化学的検討-について正常群・大動脈瘤群・肺高血圧群と対比し検討した. CMNのaMPSについてはhyaluronidase (streptomycesおよびtesticular) とchondroitinase (ACおよびABC) による消化酵素試験を用い, 次の結果を得た. (1) 正常群および肺高血圧群にみられるCMNの程度は高令で高血圧を合併した症例を除くと軽い. (2) 大動脈瘤群 (動脈硬化性および梅毒性) では一部に強いCMNを認め, aMPSは各種分画を含んだ混合型を呈した. (3) Marfanの大動脈におけるCMNのaMPSは, 症例によって態度を異にし, chondroitin sulfate ACまたはhyaluronic acidを主成分とするもの, その他のaMPS分画を含んでいるものなどがあるが, 全例chondroitin sulfate Bの相対的減少を認めた. (4) Marfanの肺動脈におけるCMNは, 全例に潜在的に程度の差こそあれ認められた. 肺動脈に血行力学的負荷を加える因子が合併すると, 肺動脈のCMNの程度は強まり, aMPS分画の態度は大動脈のそれと同じで, aMPS産生細胞は症例によって, 個体特異性を有していることを示唆する. (5) Marfanにおける大血管中膜の平滑筋細胞の代謝は他の疾患と先天的に異なり, abiotrophic changeとしてCMNが喚起し易く, それが為に成人の場合には血行力学的負荷が強まる上行大動脈に種々の変化した大動脈瘤・解離性大動脈瘤・大動脈弁閉鎖不全症など) を来たしたと考えられる.
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© 1975 順天堂医学会
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