順天堂医学
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原著
胃の増殖性病変における銀反応陽性細胞の分布と頻度について
児玉 武久
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1976 年 22 巻 1 号 p. 47-61

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抄録
近年, 胃の腸上皮化生は潰瘍, ポリープと共に癌の背景病変として注目されている. これを前癌状態とするものもあり, また中村は腸上皮化生を癌, とくに分化型癌との強い関連性をのべ, 一方異型上皮の組織発生を胃の腸上皮化生に類似が求められるとしている. この腸上皮化生と嗜銀細胞と関係の深いことは古くからHamperl, Singhによって述べられており, これは一般的通念となっている. またGrimelius染色法の開発により, 好銀細胞を染め出すことが可能となった. そこで著者は, 胃の増殖性病変と銀反応陽性細胞の関連, ことに増殖性病変が組織学的に悪性に近づくにつれて銀反応陽性細胞の分布がどのように変わるか, また中村らのいう良性異型上皮においてはどの様な態度を示すかどうかを検討した. 対象は当教室でポリープ, 良性異型上皮, 胃癌として切除された胃標本をもちいて, 胃の増殖性病変を, (1) hyperplasticpolyp, (2) metaplasticpolyp, (3) 良性異型上皮, (4) 胃癌の4つに大別し, 主病巣以外の腸上皮化生を対照群とした. そして銀反応陽性細胞の分布, 動態を知るために, 嗜銀染色 (Masson-Fontana法) および好銀染色 (Grimelius法) の両者を用いて検索を加えた. その結果, 一般に悪性に近いと考えられていた良性異型上皮は, 銀反応陽性細胞の分布, 出現頻度からみると, 良性に近かいことがわかった.
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© 1976 順天堂医学会
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