順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
原著
固有筋層 (pm) 胃癌の肉眼型とリンパ行性転移に関する研究
三宅 政房
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 22 巻 4 号 p. 389-413

詳細
抄録
早期胃癌の治癒切除ことにリンパ節廓清に関する完全な知識を得るために, 固有筋層癌 (pm癌) 84例の肉眼型とリンパ行性転移を研究し, 100例の粘膜下層癌 (sm癌) を対照として比較検討した. pm癌の肉眼型は主としてpm早期型 (27例), pmボルマン型 (57例) の2型に分類でき, 前者は早期胃癌分類法で, 後者はBorrmann分類法によってそれぞれの肉眼的特長を適切に表現できる. pm早期型においてはIIc型様癌が, pmボルマン型においてはBorrmann 2型癌が大多数を占める. sm癌のリンパ節転移率19.0%, 5生率95.1%に対しpm早期型とpmボルマン型のリンパ節転移率はそれぞれ29.6%, 56.9%, 5生率は93.8%, 54.2%でpmボルマン型の転移率は高く, 5生率は不良であった. pm早期型はsm癌と近似した成績であったが, 粘膜下層における癌細胞の浸潤範囲はsm癌よりきわめて広かった. リンパ節廓清度 (R) からみた5生率はpm早期型ではR183.3%, R2lOO%, R3100%で, R1でも良好な成績が得られた. pmボルマン型ではR127.3%, R270.0%, R3100%で, リンパ節転移陽性例に限るとR10%, R250.0%, R3100%となりR1手術は論外でR2手術でも5生率は低率であった. すなわち, pm早期型癌ではR2手術で十分効果的であることが明らかとなった. しかしpmボルマン型癌では, よりよい遠隔成績をあげるためにはR3手術 (拡大根治術) が必要であることが示唆された.
著者関連情報
© 1976 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top