順天堂医学
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原著
解凍赤血球に関する研究
とくに脱グリセリン法における一考察
横田 広夫
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1976 年 22 巻 4 号 p. 421-443

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抄録
1. 目的: 本研究の目的は長期保存を可能にした従来の脱グリセリン法による解凍赤血球を検討し, 新しく可逆的荷電中和凝集法について基礎的研究を行なうことであり, また教室における血清肝炎の発生状況を分析し, さらに解凍赤血球輸血後の血清肝炎発生につきACD保存血と比較検討することである. 2. 対象および方法: 緩速凍結法および急速凍結法を用いて凍結した赤血球を主として, 可逆的凝集法 (Huggins) および連続遠心法や反復遠心法により脱グリセリンした解凍赤血球について生化学, 代謝, 機能面より比較検討し, さらに可逆的荷電中和凝集法について基礎的研究を行なった. また1972年1月から1973年12月までの教室におけるACD保存血輸血492例を対象とし, 血清肝炎の発生頻度およびその予後について検討を行なった. 一方緩速凍結法による解凍赤血球 (冷凍血液) を輸血した193例について血清肝炎の発生頻度, 貧血の改善, 目的別, 疾患別などにつき検索し, さらに自己輸血について検討した. 3. 成績: 解凍赤血球は赤血球抵抗, ATP, 2, 3-DPG, 赤血球恒数, 輸血後生体内生存期間などについても新鮮血とほぼ等しい性状を示した. また白血球除去率は洗浄赤血球, 白血球除去赤血球に比して解凍赤血球では最も大であった. 新しい可逆的荷電中和凝集法は, 電解質溶液中でも赤血球を可逆的に凝集沈降させることができ, 脱グリセリンの一方法としてその有用性を認めた. さらに冷凍血液応用による胃外科における自己輸血法を実用化した. 教室における調査対象の492例中, 血清肝炎94例 (19.1%) と高率を呈した. 血清肝炎の予後は約43%が慢性化を示した. 一方冷凍血液を輸血した66例161単位では血清肝炎の発生は1例もなく, 術後GPT値をみてもいずれも50単位以下であり, 血清肝炎の予防対策として有用であった. その要因としては冷凍血液は約500倍ときわめて高率に稀釈洗浄するための効果と解され, 著者のHB抗原陽性血の稀釈洗浄実験でそれを裏づけるような結果を得た. 4. 総括および結語: 保存血液の有効期間が3週間と短いこと, 保存中の血球の機能低下, 白血球による免疫抗体発現および血清肝炎などは輸血療法上の大きな問題点となっている. 赤血球の凍結保存は成分輸血の一環としてこれらの問題の解決に役立つものである. 著者は解凍赤血球を種々の面より検討し, その性状は新鮮血とほぼ等しいものである事を確認した. また血清肝炎がなお高頻度にみられ, その慢性化は予後不良であるが, 冷凍血液輸血により血清肝炎の予防にも有効性を認めた. また著者の考案した可逆的荷電中和凝集法は冷凍血液の脱グリセリン法に一つの新しい方法を提起するものである.
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© 1976 順天堂医学会
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