順天堂医学
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原著
心膜炎に関する研究
-血行動態を中心にして-
高橋 文行
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1978 年 24 巻 1 号 p. 49-64

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抄録

心膜炎の臨床像は多種多様であり, 典型的なものを除くとその診断は必ずしも容易ではない. これは種々の生体の代償と適応が行なわれる結果, 軽微な徴候にとどまる例も多いためであろう. そこでこの様な臨床症状の発現の機序を血行動態面から解析することを試みた. すなわち, 実験的に心膜腔内に液体を注入し, 心タンポナーデを作製し, それに伴なう各種パラメーターの変動を観察した. また, 心膜の圧・容積関係を検討したところ, 液体注入時と排液時とでは心膜腔内圧に明らかな“hysteresis”現象が認められ, 心タンポナーデ時の血行動態の変化をよく説明した. さらにこの機序として, 心房, 心室に於けるnegative transmural pressureが重要な役割を果していることが伺がわれた. 一方, 心タンポナーデ時に於ける心収縮力低下の有無を期外収縮後の第1拍目にみられるpostextrasystolic potentiationの態度から推定することを試みたが, その結果心不全時にみられる著明なpotentiationが認められなかったため, 心収縮力の低下は無いものと考えられた.

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© 1978 順天堂医学会
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