順天堂医学
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原著
腸管型Behçet病の病理組織学的研究
渡辺 勇
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1979 年 25 巻 4 号 p. 450-473

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抄録

腸管型Behçet病の潰瘍病変は多発性で, 円形で深く, 腸間膜の反対側に見られ, 好発部位は回盲部である. 病理組織学的に, 潰瘍は結合組織性反応, 特に膠原線維の増生が弱く, fissuringを伴う非特異性炎症性潰瘍である. 本症の主潰瘍病変は, その潰瘍底の組織学的所見から, 壊死型 (急性潰瘍), 肉芽型・混合型 (慢性潰瘍) の3型に分類でき, また副潰瘍は小さいながら深く, 多くは小腸に, fissuring型の炎症性潰瘍と瘢痕治癒期の潰瘍とが見られる. 本症の潰瘍に見られる血管病変は, 対照例 (腸結核・クローン病・潰瘍性大腸炎) と基本的に同じく, いずれも静脈病変が目立ち, 静脈内膜の増殖性肥厚, 血栓形成, 動脈内膜の線維性肥厚として把握され, 罹患血管の太さは100から300μに集中している. 血管病変は, 潰潰の大きさと無関係に潰瘍周辺部に限局して見られ, 特に慢性期に相当する肉芽型では壊死型に比し強く, 潰瘍の時間的推移と密接な関係がある. しかしながら, 血管病変はU1-IIより浅い潰瘍にはなく, 潰瘍の深さが血管病変発現の為の重要な因子であると考えられる. また非潰瘍部あるいは糜爛のある粘膜下組織には血管病変がなく, リンパ管の拡張, 静脈のうっ血, 浮腫, 浮腫性硬化が見られるにすぎない. 結局, 腸管型Behçet病の潰瘍周辺に見られる血管病変は, 二次的なものであろうとの結論に達した.

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© 1979 順天堂医学会
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