抄録
近年, 甲状腺疾患の補助診断法として, 甲状腺造影法 (甲状腺リンパ管造影法) が普及しつつある. イヌ甲状腺と剖検材料を用いた実験的研究において, 注入造影剤の適正量を決定した. 更に臨床例における造影手技に若干の工夫を加え, 本法の成功率を高めた. 6年間に75例の臨床例に甲状腺造影を施行し, 造影所見, 手術材料の肉眼所見及び病理組織診断の関連性に検討を加えた. 造影所見を, cystic pattern, lobular pattern, solid patternの3基本型と混合型に分類し, 診断の有力な手掛りとなることを知った. 更に24時間後の所属リンパ節の造影所見が, 良性腫瘍と悪性腫瘍とでは異ることを知った. 本法は甲状腺の腫瘤性病変を形態学的に診断する上で有力な方法といえる.