抄録
胃隆起性病変のうち, 胃ポリープおよび隆起性早期胃癌を対象とし, これら病変の発生している胃粘膜の萎縮性変化と腸上皮化生の出現を切除胃で検討した.
ポリープや癌を有する胃粘膜の変化 (慢性胃炎) におのおの特徴があれば, これら病変の発生に慢性胃炎が母地として関与しているか, またはその進行に関係しているかと思われる. また, 良性ポリープの癌化についても同様に示唆を得ることがその目的である.
胃ポリープ (46コ) を定義し, 過形成性胃ポリープと化生性胃ポリープに分類し, 隆起性早期胃癌 (38コ) と共に, 病変の周囲, および胃の前壁・小彎, および後壁の粘膜の慢性胃炎を病理組織学的に検索した結果, 過形成性胃ポリープのある胃粘膜の萎縮性変化と腸上皮化生の出現はきわめて弱く, これとは対象的に, 化生性胃ポリープと隆起性早期胃癌ではきわめて強かった. したがって, 過形成性胃ポリープと隆起性早期胃癌とは, その発生母地である胃粘膜の萎縮性変化と腸上皮化生の出現は, 明らかに異っており, 各々異った粘膜に発生しており, 胃粘膜からみると胃ポリープの癌化は元来考えられていた頻度よりもはるかに低く, 発生した時点よりポリープはポリープとして発育し, 癌は癌として発育する事が予想される.