抄録
潜在性二分脊椎の臨床的意義に関する研究は極めて重要であり, 本症の形態分類と疼痛発症との関連, 疼痛発生の機序について研究を行った.
潜在性二分脊椎をX線形態学的にI型-VII型に分類を試みた.
その結果, III, IV, V型に腰仙部痛を訴えるものが多数あり, いわゆる有痛性二分脊椎と言われるのはIII, IV, V型に多発する事が確認された.
潜在性二分脊椎と腰椎前彎度との関係に関しては特にIII, IV, V型の形態に前彎度が増強したものが多く, また, 荷重実験においてもIII, IV, V型の症例においては負荷により前彎が著しく増強する事が確認された.
これは後方脊椎欠損特にIII, IV, V型の形態において後方制動が不充分になり, 次第に前彎が増強し, 疼痛発症の原因の一つとなる事が考えられる.
また, 手術時の肉眼的所見・病理学的所見からも骨欠損部の介在組織, あるいは残存棘突起, あるいは延長した棘突起を介しての黄靱帯・硬膜外脂肪組織等による硬膜, 並びに神経根の圧迫・癒着が疼痛の原因と考えられた.