抄録
慢性代謝障害性疾患に伴う腰椎海綿質骨梁の病理学的変化に着目し, 既に第一報 (本誌27巻4号) で報告した如く, 6症例群の合計342人体剖検例による計測値から, 肝硬変症, 肝癌, 胃癌では骨梁萎縮が著明であった.
本報では人体剖検例で認めた骨梁変化を実験的に確認する目的で肝障害, ホルモン性代謝障害, 腫瘍性悪液質をめざした動物実験を行った. 即ち, I. CCl4を20及び40週齢のSD雄ラットに0.5, 1.0, 1.5ml/kgを, 週2回9週間皮下注射後屠殺, II. cortisone acetateを20週齢の雄ラットに, 1, 5, 25, 50mg/kgを7週間, 及び4-4.5カ月齢のNew Zealand White雄ウサギに, 1, 5, 25mg/kgを6週間, 毎日皮下注射後屠殺, III. 吉田肉腫細胞を6週齢のDonryu雄ラットに102個, 104個を1回腹腔内接腫し, 12-20日後屠殺, の3種実験を行った. 第3腰椎を採取し, この組織標本の拡大トレース画像を視覚的に観察し, さらに画像処理装置 (BX-1, 武藤) を用い, 骨梁面積比率, 骨梁1個当りの面積・周長・最大長を計測した.
その結果, 各実験とも対照例に比較し, 有意な骨梁減少を認め, 視覚的骨梁パターンも人体剖検例と相似していた. この所見から長期間各種代謝障害を惹起させた動物でも, 椎骨海綿質骨梁の顕著な萎縮が, 主として組織計測的方法により明らかにされた. 以上の事実から骨梁の視覚的パターン, 及び計測値による減少 (萎縮) が多数の各種疾患人体剖検例のそれと近似的変化であることを確認し得た.