順天堂医学
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原著
慢性呼吸不全におけるヘモグロビン酸素親和性に関する研究
鈴木 光子
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1982 年 28 巻 2 号 p. 153-162

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抄録
慢性呼吸不全患者における低酸素血症・高炭酸ガス血症と酸素運搬機構との関係を明らかにするため, 実験モデルおよび慢性呼吸不全患者におけるP50, 2, 3-diphosphoglycerate (以下2, 3-DPGと略) および動脈血諸量の変化を測定し検討した. まず呼吸不全モデルとして家兎にN-methyl-N-nitrosourethaneを投与し, 実験的間質性肺炎を作製し, 2, 3-DPGおよび動脈血ガス諸量を呼吸不全の進展の経過と共に測定した. その結果肺不全の進展によりPaO2が低下するに伴い, 2, 3-DPGが増加することを認めた. 次に対象とした慢性呼吸不全患者47例の2, 3-DPGは15.5±2.8μmol/gと増加しており, PaO2とは負の相関を示し基礎実験と同様の成績をえた. しかし, このうちPaCO248torr以上の高炭酸ガス血症を伴う11例についてみると, pHの低下に伴う2, 3-DPGの減少がPaO2の低下による本酵素の増加をある程度相殺すると解される成績をえた. 経時的変化を測定しえた症例の2, 3-DPGは, pHと相関して変動した. これは臨床上, 呼吸不全患者の治療に必須となるO2吸入の影響と考えられた. 慢性呼吸不全患者のP50は正常範囲内にあったが, これは測定患者の動脈血ガスpHがほぼ正常範囲内に代償されているためと解された: 慢性呼吸不全における2, 3-DPGの変動をこれに影響する因子であるPaO2, pHとの関連において検討した. 臨床例においてはO2投与, pH異常に対する代償の程度などの因子も加わり変動の解釈は複雑となることを指摘した.
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© 1982 順天堂医学会
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