抄録
乳癌93例, 慢性乳腺症34例, 線維腺腫7例の計134例を対象として, 乳癌の血管造影法の診断的価値, 血管造影所見の特徴, 直接所見としての腫瘍濃染像と組織学的所見との関連性を中心に検討を行った.
外側胸動脈の起始は腋窩動脈より分岐するもの38.1%, 胸肩峰動脈より分岐するもの20.1%, 胸背動脈より分岐するもの27.6%であった.
腫瘍支配動脈としては内胸動脈, 外側胸動脈, 浅胸動脈が重要であり, 特に浅胸動脈の重要性を強調した.
乳癌と良性疾患との間に5%以下の危険率で有意差を認めた異常所見は, chaotic arrangement, straight course, irregular tortuosity, dilatation, hypervascularity, lymph node stain, tumor stainの7項目であった.
各所見のスコア化を試みretrospectiveに診断率を求めた結果, 乳癌の正診率は86.0%であり, 他の診断法に劣らぬ成績を示した. また腫瘍径2cm以下の乳癌の診断率では明らかに優位な成績が得られた. 組織型別の診断率の比較では髄様腺管癌が最も良好であった.
腫瘍濃染像の実体は200μ以下の血管の増生と拡張であり, 線維性間質反応と癌巣密度に影響され, このような腫瘍血管の態度と血行性転移の間に関連性があり, 一方では化学療法の効果にも影響することを推測させた.
リンパ節造影に関しては乳癌に有意に出現するが転移との相関は認められなかった.