順天堂医学
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原著
Chance Proteinuria and/or Hematuriaに関する臨床病理学的研究
吉田 美代子
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1986 年 32 巻 1 号 p. 68-76

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抄録
284例のChance Proteinuria and/or Hematuria (CPH) について臨床病理学的検討を行った. 対象は男性194例, 女性90例で, 年齢は11才より49才で平均26.2才であった. 尿蛋白は100mg/dl以下が58%を占め, 軽微なものが多かった. 血尿は陰性から各視野多数まで均等に分布していた. 約10%に腎機能低下があり, 21%に高血圧がみられた. 組織像はminimalchangeと50%focal proliferative glomerulonephritis (50%FPGN) が60%を占めていた. 蛋白尿血尿合併例及び蛋白尿単独例に種々の組織変化がみられ, 血尿単独例には, 変化の軽いものが多かった. 予後は139例に判明し, 観察期間は平均6年で, 改善46例 (33%) 不変62例 (45%) 悪化31例 (22%) であった. 生存率は3年目93%, 5年目91%, 10年目72%であった. 組織所見と予後との間には相関があり, 糸球体病変が軽いほど予後は良好であった. 悪化例には, 著しい糸球体病変. 多量蛋白尿, 腎機能低下・高血圧合併例などが多くみられ, 妊娠や出産が悪化因子と考えられる例もあった. IgA腎症は蛍光抗体法を施行した181例中109例 (60%) に認められ, 尿所見は血尿の強いものが多く, 蛋白尿は100mg/dl以下が58%と軽微であった. 組織像はminimal changeと50%FPGNが60%を占めていた. 予後は51例に判明し, 平均59ヵ月の観察期間で改善19例 (37%) 不変25例 (49%) 悪化7例 (14%) と, CPH全体例に比し, やや悪化例が少なかった. 生存率は, CPH全体例に類似していた.
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© 1986 順天堂医学会
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