抄録
わが国における小児外科の歴史, 特に賛育会病院外科と順天堂大学小児外科の歩みについて述べた.
我国では, 昭和28年頃より小児外科, 特に新生児外科が行われるようになったが, 初期の頃は早期診断が遅れ, 術前の患児の状態も不良で手術による死亡率も高率であった. しかし, 昭和41年, 順天堂大学に小児外科が開設された頃より治療成績は急速に向上し, かつては手術成功率の極めて低い先天性食道閉鎖や腸閉鎖でも, 今日では90%以上の手術成功例が得られるようになっている.
一方, わが国の小児外科の研究業績については, 1965年頃より国際学会で発表されるようになり, 既に今日まで国際的にも注目される多くの研究業績が報告されている.
順天堂大学小児外科における今日までの主要な研究業績は, 新生児外科・肝胆道外科, 特に胆道閉鎖と胆管拡張症, 輸液, 小児泌尿器外科, マイクロサージャリー, 移植等であり, いずれも国際的にレベルの高い業績である.
このように過去約30年の間に急速に発展したわが国の小児外科は, 今日解決しなければならない多くの問題が残されており, 今後の小児外科の発展の為には, わが国の小児外科医の一段の努力が必要であると考えている.