順天堂医学
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原著
冠状動脈硬化症602例の内科治療と外科治療の長期予後
内田 博
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1986 年 32 巻 2 号 p. 140-154

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抄録
1975年9月より1982年12月までに選択的冠状動脈造影を施行し, 主要冠状動脈に75% (左主幹部は50%) 以上の狭窄を認めた, 連続する602例の冠状動脈硬化症の内科治療と, 外科治療 (A-Cバイパス術) の長期予後, ならびに61例の術後グラフト造影所見について検討した.内科治療群387例の5年生存率は, 1, 2, 3枝, 左主幹部病変, 全症例の順にそれぞれ91.4, 80.8, 88.7, 77.9, 87.3%であった. 一方外科治療群215例は, それぞれ100, 98, 95.7, 82.1, 95%であり, 手術死亡率は1.9%であった. 内科治療群全体の長期予後は, 本邦のこれまでの報告, ならびに近年の欧米の成績に近く, 日本人の冠状動脈硬化症の予後は, 現在欧米と近い水準にあるものと思われた. 外科治療群の退院後の死亡は4例のみで, 手術が成功すれば良好な予後が期待できることが示された.術後グラフト造影は有症状28例を含む61例に対して行い, グラフト開存率は75.3%であった. 静脈グラフトの器質的狭窄は吻合部を除く7枝に認められ, うち術後9年経過した1例には, グラフト全長に渡って硬化性変化を思わせる所見が認められた.バイパスを受けた冠状動脈は, 47.9%に術前より病変の進行が見られたが, 大部分は吻合部またはその近位部であり, 遠位部の進行は7%のみで, 非バイパス血管病変の進行9.4%と比較して有意差は認められなかった.
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© 1986 順天堂医学会
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