順天堂医学
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原著
胃体部後壁潰瘍の臨床的ならびにX線学的研究
丸山 俊秀
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1987 年 33 巻 4 号 p. 517-527

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抄録
手術例が減少し病理組織所見との対比が出来ない現状で, 変貌しているといわれる胃潰瘍の特徴を知るため, 二重造影で質的診断できる胃体部後壁潰瘍を対象にその臨床的特徴を調べ, また臨床で初めてみる潰瘍が治癒しやすいかどうか, 再発しやすいかどうかをX線学的に検討し, 次の結果をえた. 1. 胃体部後壁潰瘍の頻度, 発症時期・自覚症状・大きさ・部位・形の年代別特徴を調べてみると, 従来からいわれている高齢者胃潰瘍の特徴は, 50歳代から始まり60歳以上で顕著になっている. 2. 短期経過例でみると, 1cm未満の潰瘍と浅い紡錘形の潰瘍が治癒しやすく, 不正円形潰瘍, 深浅のある潰瘍底, 周堤の一部の隆起-強い硬化, 非中心性の中断粘膜ひだをもつ潰瘍は治癒しにくかった. 3.1cm以上の潰瘍の縮小の仕方は求心性縮小と偏在性縮小に分けられ, 求心性縮小を示すものは治癒しやすく, 偏在性縮小を示すものは治癒しにくかった. 初回X線像と縮小の仕方を合わせて考えれば, 潰瘍の治癒の予測はより確かなものになる. 4. 再発しやすい潰瘍, 再発潰瘍の特徴を調べてみると, 3cm以上の潰瘍, 胃体上部潰瘍, 周堤の一部の隆起-強い硬化や深浅のある潰瘍底をもつ潰瘍が再発しやすく, また, これらの潰瘍底・潰瘍縁の所見のある潰瘍は, 再発潰瘍のうちの一群とも考えられ, 再発潰瘍は再び再発しやすいという結果であった. 5. これら潰瘍底・潰瘍縁の所見をもとにX線学的に検討してみると, 日常の診療でみる胃潰瘍の中には, 治癒が遷延するもの10%, 治癒遷延の可能性の高いもの約25%が含まれ, 初診時にすでに再発潰瘍が含まれる割合は約14%から35%と推定された.
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© 1987 順天堂医学会
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