順天堂医学
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特集 ミトコンドリア研究:基礎と臨床の接点を求めて
ミトコンドリア形成の分子生物学
森 正敬
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1990 年 35 巻 4 号 p. 470-475

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抄録

ミトコンドリアは, 真核細胞のエネルギー産生をはじめ, 種々の物質代謝を担う重要な細胞内小器官である. ミトコンドリアの大きな特徴の1つは, ミトコンドリア遺伝子と核染色体遺伝子の両方の支配を受けていることである. ミトコンドリア遺伝子の全構造は解明され, リボソームRNA・転移RNAおよび13種の内膜ポリペプチドがコードされていることが分かった. 一方, それ以外のミトコンドリア蛋白質は核遺伝子にコードされ, ミトコンドリア外部で合成された後に内部へ移行する. このうち, 多くの蛋白質はN末端に〈延長ペプチド〉を持つ分子量の大きい前駆体の形で合成され, ミトコンドリアに移行して成熟酵素に転換されることが明らかとなった. 遺伝子工学の手法により多くの前駆体蛋白質の一次構造が決定され, さらに延長ペプチドがミトコンドリア移行のシグナルとして働くことも明らかとなった. 現在, 前駆体蛋白質の立体構造の解析や膜透過に関与する他の因子の解析が進んでいる. また今までに得られた成果は, 〈ミトコンドリア病〉の病因解析に役立っている.

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© 1990 順天堂医学会
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