順天堂医学
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特集 ミトコンドリア研究:基礎と臨床の接点を求めて
パーキンソン病の成因とミトコンドリア
水野 美邦
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1990 年 35 巻 4 号 p. 455-469

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抄録

パーキンソン病は原因不明の神経変性疾患の一つであるが, 最近パーキンソン病にきわめて類似したモデルが作成できるようになった. その物質はMPTP (1-methyl-4-phenyl-1, 2, 3, 6-tetrahydropyridine) である. この物質は脳に取り込まれるとおもにグリア細胞の中のモノァミン酸化酵素Bで酸化されてMPP+ (1-methyl-4-phenylpyridinium ion) になる. MPP+はドーパミン取り込み部位から濃度勾配にさからって線条体ドーパミンニュー「ロン終末に取り込まれ, 高濃度に蓄積し, 選択的な黒質線条体ドーパミンニューロンの変性を起こす. われわれはMPP+がミトコンドリアのComplex Iおよびα-ケトグルタル酸脱水素酵素を阻害することを見つけ, 神経細胞変性の機序は, ミトコンドリア呼吸の障害によるenergy crisisと考えられるに至っている. MPTPモデルでの成績を踏まえ, われわれはパーキンソン病の発症機序にもミトコンドリア異常の関与があるのではないかと考え, パーキンソン病剖検脳よりミトコンドリア分画を抽出し, 電子伝達系酵素蛋白複合体活性の測定およびサブユニット分析を行ったところ, 活性はComplex IIIがパーキンソン病にて有意に低下していたが, サブユニット分析ではComplex Iの4つのサブユニットがパーキンソン病で低下していた. これらの所見は今後パーキンソン病の発症機序を研究する上で重要な所見と考えられる.

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© 1990 順天堂医学会
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