抄録
聴性誘発反応, すなわち聴性脳幹反応 (ABR) ・聴性中間反応 (MLR) ・頭頂部緩反応 (SVR) の潜時・振幅を測定し, 加齢・痴呆による変化を検討した.
対象は65歳以上とし, 正常加齢者群20名・脳血管性痴呆群 (VD) 21名・アルツハイマー型老年痴呆群 (SDAT) 32名である. また, 対照群として20歳台の若年健常者10名を用い, 自覚閾値上60dBのクリックまたはトーンバーストを一側づつ両耳に与えた. その結果, 正常加齢者群ではMLRでPo・Pa成分の潜時の延長を認めた. VDでは, ABRでI-III IPLの延長を認めた. SDATでは, ABRで左側III-V IPLの延長を認め, MLRではNb・Pb成分などの後期成分の出現率の低下を認めた.
加齢におけるMLRの変化は, その反応起源から視床および上行性網様体賦活系の機能低下を示唆するものであり, 老人性睡眠障害などの症状との関連が考えられる. VDでのI-III IPLの延長は, 脳動脈硬化の度合を反映している可能性がある. SDATでのABRおよびMLRの変化は, 痴呆の重症度と相関するものであった. 以上の所見は, 聴性誘発反応の今後の臨床応用への可能性を示唆するものである.