順天堂医学
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原著
肝に多発する肝細胞の過形成性結節 (結節性再生性過形成) の臨床病理学的研究
塩津 英俊
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1991 年 37 巻 2 号 p. 218-230

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抄録

肝に多発する結節で, 結節がSteinerのnodular regenerative hyperplasia (NRH) にほぼ一致する結節を有する10例 (剖検例7例・生検例3例) を, 臨床的・病理組織学的に検討した. 肉眼的には肝に結節がびまん性に存在するもの5例, 散在性に存在するもの1例, 無数の癌の転移巣とともに結節が存在するもの1例とがあった. 結節は肥大した肝細胞からなっており, 核はわずかに腫大しているがほぼ均一であった. 結節はほとんどが亜小葉性でRappaportのzone1を中心に形成され中心部にグリソン鞘を認めるものが多かった. 背景の肝病変としては線維化のみられるもの3例, みられないもの3例, 無数の癌転移巣と門脈腫瘍塞栓がみられたもの1例があった. 生検例3例はいずれも特発性門脈圧亢進症に相当する臨床像を示した. 肝線維化のみられない剖検例2例はうっ血が強く, 結節の少ない1例は小葉間動脈の硬化像が強かった. 以上から, 結節の形成には肝内の循環障害との密接な関係が考えられ, その強さ, 範囲によっては結節形成の少ないNRHの症例もありうると考えた. NRHと門脈圧亢進との関連は, 線維化のみられた症例に肝外門脈の硬化がより強く認められ, 線維化が門脈圧亢進の主たる原因となっていた.

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© 1991 順天堂医学会
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