順天堂医学
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原著
知能制限者の心因反応に関する精神医学的考察
伊藤 匡
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1992 年 38 巻 1 号 p. 71-83

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抄録

心因反応を生じた境界知能および軽度精神遅滞者46名を対象に, その男女差・学歴・臨床経過・心理検査の面から検討した. 対象は昭和59年4月1日から平成2年12月31日までの期間に, 順天堂大学医学部附属順天堂医院と順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院の入院患者34例と外来患者12例である. その結果1) 男女比は女性が多かった. 2) 平均初発年齢は男女ともに21歳台であったが, 初発年齢と知能間に有意な相関はなかった. 3) WAISの下位検査で単語問題が算数問題を除き, 他の下位検査と比べ有意に低かった. 4) 学歴と知能では, 高校卒業以上の群は中学校卒業までの群に比べ有意に知能が高かった. 5) 心因は対人葛藤・学業不振・身体疾患と事故が多かった. 6) 状態像は短絡行動, 心気・不安状態, ヒステリー状態, 妄想状態の順であった. 心気・不安状態の方がヒステリーに比べ知能が有意に高かった. 7) 予後と知能間には有意な相関はなかった. 8) 心因反応の成立には社会環境要因が大きく関係していることが考えられた. また知的制限が大きいほど, より未熟な状態像を呈しやすいこと, 抑うつ状態が持続せず各状態像間の移行が頻繁に認められることが判明した.

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© 1992 順天堂医学会
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