順天堂医学
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原著
Adriamycin (ADR) 肝動注後および血漿交換療法併用時の血中ADR動態に関する臨床的検討
菅野 勉
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1992 年 38 巻 2 号 p. 202-209

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抄録

消化器癌の肝転移症例を対象に抗癌剤であるAdriamycin (以下ADR) を, 肝動注後に血漿交換療法を併用することにより全身に拡散させADR濃度の低減をはかった. 肝動脈内にADR30mgを投与し, ADR投与後120分まで経時的に末梢静脈のADR濃度を測定した. ADR投与後30分を変曲点として, ADR投与後30分までは急速に濃度は低下する分布相を示し, ADR投与後30分よりなだらかに低下する消失相を示した. ADR投与後120分での末梢ADR濃度は, 0.021μg/mlであった. 台形法を用いて薬学的に検討したところ, 前期薬剤分画は6.252μg/ml/min, 後期薬剤分画は, 4.226μg/ml/min, 全期薬剤分画は10.478μg/ml/minで, 後期薬剤分画が全期薬剤分画に占める割合は40.3%であった. つぎに変曲点のADR投与後, 30分以内より血漿交換療法を併用し末梢血ADR濃度を調べた. ADR投与後120分での血中ADR濃度は検出不能のレベルまで低下していた. 前期薬剤分画は5.672μg/ml/min, 後期薬剤分画は1.476μg/ml/min, 全期薬剤分画は7.148μg/ml/minで, 後期薬剤分画が全期薬剤分画に占める割合は20.6%となり, 血漿交換療法併用によって末梢血ADRを除去することができた.

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© 1992 順天堂医学会
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