抄録
胃癌患者の胃所属リンパ節が, 抗腫瘍能にどのような役割を担っているかを検討する目的で, 所属リンパ節を外科臨床に即して群分けし, 所属リンパ節リンパ球subsetを調べた. 胃癌31症例から手術時に所属リンパ節51個を採取しリンパ球を分離, Leuシリーズmonoclonal抗体と反応させ, two color flow cytometryを用いて所属リンパ節リンパ球subsetを調べた. その結果, リンパ節転移陰性例の近位リンパ節ではhelper T細胞, 活性化T細胞が多かった. 遠位リンパ節では, これらの細胞の増加を認めなかった. 近位リンパ節転移陽性例の転移陰性遠位リンパ節では, helper T細胞, 活性化T細胞が多かった. 癌巣が胃下部領域に存在するときの転移陰性右噴門リンパ節, あるいは癌巣が胃上部領域に存在するときの転移陰性幽門上リンパ節, または幽門下リンパ節ではhelper T細胞は多かったが, 活性化T細胞の増加は認められなかった. 以上より, 転移陰性近位リンパ節, および転移陽性近位リンパ節からの影響が考えられる転移陰性遠位リンパ節において抗腫瘍活性の低下はなく, むしろ抗腫瘍能の増強を示すsubsetの変化を認めた.