抄録
腎臓病学はこの9年間に長足の進歩をとげた. まず, 腎不全の治療法としてCAPD (continuous ambulatory peritoneal dialysis) の導入により在宅治療が可能になった. また, 血液透析も透析膜の改良により短時間透析が考案され患者に福音をもたらした. 腎生理学の進歩も目覚ましいものがあるが, 尿細管刷子縁膜を用いた物質輸送の研究もその例外ではない. また, 本態性高血圧症の原因として遺伝的な細胞膜異常が指摘され, 将来の遺伝子治療への可能性が期待される. 腎疾患がどのようにして腎不全に到るのか, そのメカニズムについて, 現在は分子生物学を用いて解明されつつある. 透析療法を必要としない未来の腎臓病学への序奏となるであろう.