抄録
腎尿路系は発生学的に複雑なことから, 先天性奇形が高頻度に認められる. 腎尿路奇形の発見の経緯としては, 尿路感染や腹部腫瘤などの症状からであるが, 最近は胎児超音波あるいは学校検尿などの尿スクリーニングで無症状のうちに発見される症例が増加しつつある. 今回, 腎尿路奇形のうち, 日常診療で比較的よく遭遇する多胞性異形成腎 (MCDK) ・先天性水腎症, そして膀胱尿管逆流 (VUR) における早期診断の意義を考察した. MCDK13例についての検討では, 両側性4例が全例, 片側性9例中7例 (78%) が胎児超音波で出生前診断された. MCDKは無機能腎であるゆえ, 両側性の場合は新生児期に致死的経過をとるため, 臨床的に問題になるのは片側性である. 片側性MCDKは対側にMCDK以外の尿路奇形を合併することが多く, 著者らの症例でも44%に合併奇形が, うち75%がVRUであつた. これら合併奇形の有無が児の予後を左右することから, 早期に診断し合併奇形の検索をすることが必要である. 先天性水腎症41例の発見経緯と治療について検討した. 胎児超音波で出生前に診断されたものは26例 (63%) で, 出生後, 尿路感染・腹部腫瘤・検尿異常などの症状で発見されたものが15例 (37%) であった. 後部尿道弁による胎児水腎症4例に対し, 胎児治療を行った. 外科的治療の適応についてはDTPA利尿レノシンチと腎超音波所見の経時的変化などから決定している. VUR63例について発見の経緯および治療・管理について検討した. 大部分のVUR症例は出生後, 尿路感染で発見された. 一部症例は腹痛, 検尿異常で発見された. 逆流防止術は, IV度, V度の高度逆流例, 腎瘢痕例, 抗生剤少量予防投与にもかかわらず尿路感染を繰り返す症例, 他の尿路奇形を合併する症例などに対し, 年齢を考慮しつつ行っている.
これら腎尿路奇形は適切な治療, 管理をおこなえば腎の不可逆的荒廃は未然に防ぎえるため, 早期発見をより効率的に行うことが重要と思われた.