順天堂医学
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特集 腎泌尿器疾患の基礎と臨床
小児尿細管疾患の臨床
-最近のトピックス-
五十嵐 隆
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1995 年 41 巻 3 号 p. 319-330

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抄録
小児の尿細管疾患の臨床につき, 最近の知見を中心に解説した. 1) 腎尿細管性アシドーシス: 遠位型では (a) 無治療下で著しい尿細管性蛋白尿が見られ治療にてそれが消失すること, (b) 約7割に腎嚢胞が生じることが明らかになった. 2) 特発性低分子蛋白尿症: 本症は集団検尿にて無症状の時期に蛋白尿の指摘を契機に発見される. 糸球体障害や腎髄質の石灰化が高率に出現することが明らかとなり, 腎機能予後は良好ではない可能性が高い. また, 臨床像が英国のDent病 (塩素イオンチャンネルの異常) に類似することが明らかとなった. 3) 腎性低尿酸血症: 人における核酸の最終代謝産物である尿酸のクリアランスが亢進し低尿酸血症を呈する病態で, 頻度は小児では約0.4%である. 運動後に急性腎不全を呈する患者が増加している. 活性酸素を中和する抗酸化作用が本症では低下していることが, 活性酸素による血管収縮や尿細管障害を生じ急性腎不全を惹起するものと推定される. 4) 細菌毒素による腎障害: Yersinia毒素とベロ毒素は共に尿細管細胞にリセプターを有し, 尿細管障害の原因となる. yersinia感染症や病原性大腸菌感染による溶血性尿毒症症候群における急性腎不全の成立に細菌毒毒による尿細管障害が関与する可能性が指摘される.
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© 1995 順天堂医学会
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