順天堂医学
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特集 『骨粗鬆症をめぐって』
骨粗鬆症に関する最近の知見
折茂 肇
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1996 年 42 巻 1 号 p. 2-12

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抄録
骨粗鬆症に関する最近の知見について私の考えをお話ししたい. 骨粗鬆症の予防の最終目標は骨折の予防にある. 骨粗鬆症のいろいろな病態の中で一番問題なのは骨折で, その最大のリスクは骨量の減少である. これに外傷や転倒が加わると骨折を起こすわけで, これに関連した因子としては最大骨量の不足と骨量減少速度の亢進があげられる. 骨量は加齢に伴って減少するが, その減少には個人差がある. 即ち最大骨量が正常な群と最大骨量が低い群との2群があり, そのおのおのに骨量減少が生理的な範囲にとどまる群と骨量減少の速度が速い群 (年間3%以上骨量が減少する人) があるためと考えられる. 最大骨量の低い人については骨量を骨折閾値以下にしないことが重要である. 骨量に関しては双生児などの研究から, 約75%が遺伝的素因により決まるといわれている. 骨量減少の速度が速い群については, これを早く発見して生理的な範囲に近づけることが予防と早期治療のポイントである. それでは実際の骨量減少に対応して, どの辺から予防や治療を開始するべきであろうか. WHOの提案では最大骨量の-2.5標準偏差以下を骨粗鬆症, -1--2.5標準偏差を骨減少症としている. 私は最大骨量が-2.5標準偏差以下になったら治療を, -1.5標準偏差以下になったら予防を開始すべきと考えている. 診断がつき治療を決定する際には病型の判定が大事になる. 病型を判定し薬剤を選択することが重要である. 骨粗鬆症治療においては骨のことだけを考えるのではなく, 患者のQOL, 脂質代謝等に対する影響や精神的な問題など全身的な問題を広く考えて, 治療にあたるべきである.
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© 1996 順天堂医学会
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