順天堂医学
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42 巻, 1 号
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目次
Contents
特集 『骨粗鬆症をめぐって』
  • 折茂 肇
    1996 年 42 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症に関する最近の知見について私の考えをお話ししたい. 骨粗鬆症の予防の最終目標は骨折の予防にある. 骨粗鬆症のいろいろな病態の中で一番問題なのは骨折で, その最大のリスクは骨量の減少である. これに外傷や転倒が加わると骨折を起こすわけで, これに関連した因子としては最大骨量の不足と骨量減少速度の亢進があげられる. 骨量は加齢に伴って減少するが, その減少には個人差がある. 即ち最大骨量が正常な群と最大骨量が低い群との2群があり, そのおのおのに骨量減少が生理的な範囲にとどまる群と骨量減少の速度が速い群 (年間3%以上骨量が減少する人) があるためと考えられる. 最大骨量の低い人については骨量を骨折閾値以下にしないことが重要である. 骨量に関しては双生児などの研究から, 約75%が遺伝的素因により決まるといわれている. 骨量減少の速度が速い群については, これを早く発見して生理的な範囲に近づけることが予防と早期治療のポイントである. それでは実際の骨量減少に対応して, どの辺から予防や治療を開始するべきであろうか. WHOの提案では最大骨量の-2.5標準偏差以下を骨粗鬆症, -1--2.5標準偏差を骨減少症としている. 私は最大骨量が-2.5標準偏差以下になったら治療を, -1.5標準偏差以下になったら予防を開始すべきと考えている. 診断がつき治療を決定する際には病型の判定が大事になる. 病型を判定し薬剤を選択することが重要である. 骨粗鬆症治療においては骨のことだけを考えるのではなく, 患者のQOL, 脂質代謝等に対する影響や精神的な問題など全身的な問題を広く考えて, 治療にあたるべきである.
  • 煎本 正博
    1996 年 42 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎え骨粗鬆症の診断・治療は現在の本邦の医療・医学界で最も注目されている分野のひとつである. 人間ドックや成人病健診でも骨塩定量検査が行われるようになり日常の診療現場でもその診断を行うことはめずらしいことではなくなっている. しかし, X線検査で骨陰影の減弱が認められたり, 骨塩定量検査で骨塩量の低下が認められても骨粗鬆症の診断が確定するわけではなく, 鑑別しなければならない疾患がある. その中には漫然と骨粗鬆症として経過を観察すると重大な結果を招く疾患も存在する. 本稿ではこれら疾患の画像所見について解説し, 骨粗鬆症との鑑別について述べる.
  • 骨折と骨粗鬆症を中心として
    野沢 雅彦, 山内 裕雄
    1996 年 42 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    整形外科の日常診療で, 腰背部痛を訴えて来院する患者さんの中で, 骨粗鬆を伴って受診するものの多くは高齢者である. また, 脊椎に圧迫骨折が出現すると疼痛は憎悪し, その対応には十分に注意する必要がある. 高齢者に出現することが多い四肢の骨折は大腿骨頚部骨折・上腕骨外科頸骨折・橈骨遠位端骨折などを挙げることができるが, 大腿骨頸部骨折などはその対応を誤ると直接その患者の生命予後に関係してくる. 最大骨量を獲得以降, 年齢とともに骨量は減少するが適度な減少であれば生理的であり, 骨量を回復させることで必ずしも骨折が予防されるわけではない. むしろ社会的環境を整備し, 転倒などを防止することが骨折の予防には重要である.
  • 腎性骨異栄養症
    窪田 実
    1996 年 42 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    腎不全, 特に慢性透析患者に合併する骨代謝障害は総じて腎性骨異栄養症 (Renal Osteodystrophy: ROD) と呼称される. 腎性骨異栄養症は骨の組織学的所見から, 1) 二次性副甲状腺機能亢進による繊維性骨炎 2) アルミニウムによる骨軟化症 3) 骨軟化症 (くる病) 4) 骨粗鬆症 5) 低回転骨 6) 破壊性脊椎関節症に分けられる. わが国で最も頻度多く観察される二次性副甲状腺機能亢進症は, 成因・診断・治療について研究が進んでいる. 発症には, 1) Pの排泄不足による高P血症や, 骨の副甲状腺ホルモンに対する抵抗性, および活性型ビタミンD産生低下によって生ずる低Ca血症. 2) 副甲状腺の活性型ビタミンDに対するリセプターの減少. 3) Caによる副甲状腺ホルモン分泌抑制のセットポイントの変化, が考えられており, これらの因子による副甲状腺ホルモンの過剰な分泌が骨回転の早い繊維性骨炎を形成する. 骨変化は腎不全初期から生ずるため, 慢性腎不全保存期からの観察・治療が必要である. アルミニウムによる骨障害はアルミニウム骨症と呼ばれている. アルミニウムの侵入経路は透析液とP結合薬である水酸化アルミニウムであることが判明し, それぞれ対策が講じられている. 過剰な副甲状腺ホルモン分泌の抑制によって, 透析患者に低回転骨が多く合併することが最近, 報告され話題となっている. 本稿では腎性骨異栄養症について原因と治療法について概説する. これらの臨床像を詳細に観察し, 適切な予防/治療法の検討が望まれる.
  • 深間内 一孝
    1996 年 42 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症の多くは高齢者に起こる骨量の減少であり, 退行期骨粗鬆症と分類される. その患者の殆どが女性である. この骨量の減少の原因は老化に加えて, 閉経によってエストロゲンが減少することによる. エストロゲンの減少は破骨細胞に骨吸収を促し, 骨芽細胞の骨形成を抑制する. 一方, 閉経後に起こるエストロゲン欠乏による諸症状は, ホルモン補充療法によってかなり軽快させることができ, この療法は現在普及しつつある. この治療の目的の一つに骨量の減少予防も効果があり注目されている. 今回は3年前から開設された産婦人科の中高年外来で行われている女性ホルモン補充療法による骨粗鬆症予防の現状を紹介する. 女性ホルモン補充療法による骨粗鬆症の予防や治療は行うにのは, 早期に診断して治療を開始することが必要であるが, 近年エストロゲン受容体遺伝子多型によって骨密度に差が生じることが明らかとなりつつあり, 骨粗鬆症の予防治療に対して女性ホルモン補充療法が個別化されて行われる可能性がでてきた.
  • 時田 章史, 吽野 篤, 三浦 優子, 田和 俊也, 石川 明道, 山城 雄一郎, 藪田 敬次郎, 深間内 一孝, 三橋 直樹, 桑原 慶紀 ...
    1996 年 42 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    近年の平均寿命の伸び, 高齢化社会の到来と共に, 成人病の一つとして骨粗鬆症, 特に退行期骨粗鬆症が注目されるようになった. 骨粗鬆症患者は現在250万人とも500万人いるとも言われ, 今後その数は急速に増加すると推測され, その予防が重要なテーマとなってきた. 骨粗鬆症は明らかな原因疾患が存在しない原発性骨粗鬆症と, 他の基礎疾患に伴って発症する続発性骨粗鬆症とに大別されるが, 小児期においても骨粗鬆症は存在し, 退行期骨粗鬆症を除くすべての骨粗鬆症, すなわち若年性骨粗鬆症と全身疾患・薬剤・不動化などに伴う続発性骨粗鬆症が存在する. 骨粗鬆症の予防として, 10歳代後半に最大となるピークボーンマス (最大骨量) を増加させることが重要になってきた. 十分な栄養を取ること, 特にカルシウムの摂取を心がけること, 適切な運動を行うことが予防の基本である. 一方, 遺伝的要因も重要であることが最近の知見で明らかになりつつある. ビタミンD受容体遺伝子多型は骨粗鬆症の発症に関与する体質を知る一つの手段になりうる可能性がある. 今後は遺伝的体質に応じた, 栄養指導・運動指導を小児期および, 青年期から個別に行うことが効率の良い予防法につながるであろう.
原著
  • -日本病理剖検輯報を用いた研究-
    久岡 英彦
    1996 年 42 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    【目的】急性心不全に含まれる虚血性心疾患を加えた虚血性心疾患年齢調整死亡率の推移, 突然死と職業との関連を, 日本病理剖検輯報 (輯報) を用い, 全国的規模で明らかにする. 【方法】1959年-1989年の5年毎の輯報に収録された全剖検例中, 突然死または急死症候群1,509例を抽出. 1) 突然死例中に占める虚血性心疾患の割合を算出し, 各年度の人口動態統計上の心不全例中の虚血性心疾患数を推定し, 人口動態統計の虚血性心疾患死亡者数に加算し, 1985年を基準人口とする調整死亡率を計算した. 2) 突然死例の職業・病因などを無作為抽出対照6,945例と比較した. 【結果】突然死例は, 男性950例・女性559例;平均年齢60歳 (男58歳女64歳). 突然死率は1959年 (0.62%) から1979年 (0.54%) まで比較的定常であったが, 1984年に1.06%に上昇し, 1989年1.46%まで増加した. 虚血性心疾患年齢調整死亡率は, 1959年36.7から1989年74.2と増加し, 人口動態統計値の2倍以上であった. 各職種の平均年齢は突然死群で低く, 運輸通信職・採掘業で有意差を認めた. 突然死群の運輸通信職・保安職の比率は対照に比し有意に多かった. 【総括】虚血性心疾患の実死亡率は, 人口動態統計上の2倍以上である可能性がある. 一部の突然死では職種に伴うストレスが原因と考えられた.
  • 渡部 洋三, 津村 秀憲, 松本 文夫, 坂本 修一, 前川 武男, 巾 尊宣, 矢吹 清隆, 佐藤 浩一
    1996 年 42 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 食道癌術後障害としての狭窄や嚥下障害を予防するために, 1991年12月から胸部食道癌に対して行ってきている胸腔内上縦隔器械吻合と, それまで行ってきた各種頸部手縫い吻合後の術後障害を比較検討し, 術式の評価をすることにある. 対象は頸部吻合としてGambee 1層吻合 (G1層法) 14例・層別2層結節吻合 (2層結節法) 17例・層別2層連続吻合 (2層連続法) 26例および胸腔内上縦隔器械吻合 (器械法) 26例の計83例である. 検討項目は (1) 経口摂取開始病日, (2) 縫合不全発症病日, (3) 縫合不全発生頻度, (4) 術後狭窄発生頻度および (5) 術後嚥下障害発生頻度の5項目である. 食事開始時期は, 各種頸部吻合が2-3週間であるのに対し, 器械法は10日前後と有意に短かった. 縫合不全発症病日は, G1層法・2層結節法・2層連続法の順に長かった. 縫合不全発生頻度・術後狭窄発生頻度・術後嚥下障害発生頻度は, G1層・2層結節法・2層連続法および器械法の順に低率であった. 以上の成績より食道癌術後再建法としての器械吻合は, 術後障害の面から各種頸部手縫い吻合と比較検討し, 優れた術式であることが分かった.
  • 倉本 孝雄
    1996 年 42 巻 1 号 p. 72-81
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    今回, IgA腎症の進展機序を明らかにする目的でIV型コラーゲン, ラミニン, フィブロネクチン, I型コラーゲンなどの糸球体細胞外基質 (ECM) 成分の糸球体内分布とIL-1, IL-2, PDGF・AA鎖, PDGF・BB鎖, TNF-αなどのサイトカイン・成長因子の発現を蛍光抗体法により検索した. その結果, IgA腎症病変の進展につれてIgA, C3の沈着と平行して, これらECM (フィブロネクチン・ラミニン) が糸球体メサンギウム領域に増生・蓄積し, さらに糸球体毛細血管壁内皮細胞下へ進展していることが確認された. また, 組織障害の高度な症例ではIL-1, IL-2, PDGF・AA鎖, PDGF・BB鎖, TNF-αが糸球体メサンギウム領域を中心に染色された. 以上より, lgA腎症の進展には, ECMの産生異常と蓄積が関与していると思われ, そうした現象にはこれらサイトカイン・成長因子の関与が示唆された.
  • 蒔田 雄一郎
    1996 年 42 巻 1 号 p. 82-91
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    培養ラットメサンギウム細胞において, 高糖濃度がカテプシンB, Lの活性・蛋白量・mRNAレベルとそのインヒビターであるシスタチンβの蛋白量・mRNAレベルに与える影響について検討した. 高糖濃度条件下では, カテプシンB, Lは6時間培養で発現の増強を認め, 12時間以後はそのmRNAはいちじるしく減弱し, 36時間で活性が低下し, またシスタチンβの蛋白量とmRNAは, 24時間培養で有意に増加していた. 糖尿病性腎症のin Vitroモデルで, カテプシンB, Lの活性低下, シスタチンβの発現増強がみられたことより, 細胞内蛋白の代謝能が低下していることが明らかにされた. 糖尿病性腎症における腎糸球体硬化の進展には, カテプシンB, Lの発現の減弱とシスタチンβの発現の増加が関与していると推測される.
  • 大高 恵一
    1996 年 42 巻 1 号 p. 92-98
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    本研究は, 癌転移のメカニズムの解明の一助として, in vitro培養系でヒト培養直腸癌細胞株SW837を用いて簡便なモデルを開発し, 癌細胞の遊走能および増殖能を定量的に解析した. また, このモデルを用い, 個々の細胞外基質の成分 (collagen type I・type IV・laminin・fibronectin) が癌細胞の遊走, および増殖に及ぼす影響についても検討した. その結果, 癌細胞の遊走能においてlamininが最も早く, collagen type Iが最も遅かった. また, 増殖能においてはlamininが他の細胞外基質に比して有意に高かった. 以上より癌細胞の転移機構においては, 細胞外基質が重要な働きをすることが示唆された.
症例報告
報告
総説
  • -leucovorin 15-FU, CDDP/5-FU療法の基礎と実際-
    射場 敏明, 八木 義弘
    1996 年 42 巻 1 号 p. 113-120
    発行日: 1996/05/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    5-flurorouracil (5-FU) のbiochemical modulationは, 従来化学療法に比較的抵抗すると考えられてきた胃癌の治療に革新をもたらした. すなわち5-FU単独ではせいぜい22%程度であった奏効率が, 1eucovorin/5-FU併用療法では32-48%, cisplatin/5-FU併用療法では31-65%にまで上昇するというものである. このbiochemical modulationを利用して良好な成績を得るためにはそのメカニズムの理解が必須である. われわれはSarcoma-180移植マウスにおける腫瘍内還元型葉酸値の測定によりleucovorinとcisplatinのmodulatorとしての特性を明らかにし, さらに, 理論的投与法と効果判定法についても検討を行った.
抄録
てがみ
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編集後記
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